京橋・宝町法律事務所

KYOBASHI TAKARACHO PARTNERS

預金も遺産分割の対象となるのか?

銀行預金が遺産分割の対象になるか否かが争われた裁判で,最高裁第一小法廷は,この度,最高裁判所の裁判官15人全員でおこなう大法廷に審理を回付しました。

遺産分割とは,亡くなられた方の遺産を相続人たちで具体的にどのように分けるのかを決めることですが,遺産に銀行預金があった場合につき,最高裁は「相続人数人ある場合において,その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは,その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とする」(最高裁昭和29年4月8日判決)と判断し,銀行預金は遺産分割の対象ではないとしています(上記判決で「可分債権」というのが預金のことです)。

本件は,相続人が預金などの遺産分割を求めて家庭裁判所に審判を申立て,1審(大阪家庭裁判所)と2審(大阪高等裁判所)は,いずれも,上記の最高裁判決にしたがい「預金は遺産分割の対象外」であると判断しています。これに不服の相続人が最高裁に上告したものですが,今般,最高裁が審理を大法廷に回付したことで、いままでの判例が見直される可能性が高まっています。

素人的には,預金は,当然遺産分割の対象であると思われるかもしれませんが,今までの最高裁判決はそのように扱っていなかったのです。前記のとおり,預金は「相続分にしたがい当然に分割して承継される」とされています。つまり,相続人間で遺産分割が成立していなくても,早く預金が欲しい相続人は,銀行等の金融機関に対して,法定相続分にしたがった預金の支払を求めることができるのです。たとえば,亡くなられた方名義のA銀行の口座に100万円の預金があり,相続人が子ども2人だったとすると,相続人は,それぞれA銀行に対し,50万円ずつ支払うように求めることができるのです。

もっとも,判例は,預金を遺産分割の対象にすることを禁止するわけではありませんので,相続人全員が合意すれば,預金を遺産分割の対象にすることはできます(家庭裁判所での調停等の実務でもそのように運用されています)。一般的にも,預金を含めた相続財産全部を遺産分割の対象にしているケースが多いと思います。よくあるのが,相続人の一人が不動産を取得し,もう一人は預金を取得するという形の遺産分割をしているケースです。

他方で,最高裁判決にしたがい,遺産分割をしないまま各相続人が金融機関に預金の払い戻しを求めても,実際のところ金融機関は払い戻しに応じてはくれません。相続人全員の署名と実印・印鑑証明書を添付した書面の作成を要求されます(最近は,一部の金融機関で柔軟に対応するところも出てきているようではありますが・・)。金融機関が,ある相続人に相続分の預金を払い戻した後,預金を含む遺産を対象とした遺産分割協議が成立すると,もう一度払い戻しをやり直さないといけないことにもなりかねず,また,金融機関が相続人同士のトラブルに巻き込まれてしまうリスクがあるため,金融機関は,遺産分割協議が成立するまで,払い戻しに応じないのです(遺言書があれば応じてくれますが)。

このように,今までの最高裁判決は,一般的な感覚や銀行実務と隔たりがあります。判例変更の動向が大いに注目されるところです。
※その後,平成28年12月19日に最高裁大法廷は判例を変更し,預貯金は遺産分割の対象となると判断しました。詳しくは以下の関連コラム「預金も遺産分割の対象となる!」をご覧下さい。

(文責:上田 啓子

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