京橋・宝町法律事務所

KYOBASHI TAKARACHO PARTNERS

継続的契約を終了することは制限されるのか?

企業が持続的に成長していくためには、例えばモノを仕入れてこれを販売する事業を行っている企業の場合、継続して安定的にモノを仕入れることを可能とする仕入先との契約関係を整備することが重要です。このような例に限らず、企業間の取引においては、都度注文をしてモノ・サービスが提供され、後にまとめて支払をするというサイクルが繰り返されます。この場合に、注文書と請書を交わすだけ、あるいは電話とかメールでのやり取りのみで取引が行われる場合もあれば、取引基本契約等の基本となる契約を整備して、これに基づいた個別の取引がなされることもあります。

以上のような契約関係は、単発の取引ではなく一定期間継続した取引が予定されているのであり、これを「継続的契約」と呼んでいます(「継続的契約」は、ほかにも「賃貸借契約」や「業務委託契約」など、実務では良く見られる契約であり、「契約書」を取り交わす契約は、むしろこちらの方が多いといえます)。

企業間同士のトラブルの一つに、いままで長年にわたって続いてきたこの「継続的契約」を,一方の企業が自己の都合で(または相手企業に原因があるとして)、打ち切り、これによって、その取引に収益の多くを依存していた打ち切られた側の企業が「非常に困った!」というケースがあります。

もとより、わが国は自由主義経済を採用しており、取引関係を(つまりは契約関係を)どこの企業と続けるか(続けないか)ということは、基本的に「契約自由の原則」が支配するところであって、その判断につき、一々国家(裁判所)が介入してこれをコントロールするということはありません。しかし、これも当然のことながら、自由の裏には責任があり自由や権利を濫用することは許されません。そこで、継続的契約について、法律上または契約上、解消の要件は充たされているものの、それだけでは契約の解消は認められず、「契約を終了させてもやむを得ない事由」とか「解消を認める正当な理由」が必要として、解消を制限する裁判例が、昔から数多く存在します。

もっとも、「やむを得ない事由」とか「正当な理由」が具体的にどのような場合に認められるのかについては、明確な基準は存在せず、個々の案件における諸要素を考慮したケースバイケースの判断となっているのが実情です。とすると、この種の裁判においては、いきおい、色んな事実の言いたい放題となってしまい、裁判の結果も裁判官の価値判断一つで決まる面もあって、非常に予測困難な状況となることも少なくありません(著者も、この種の継続的契約関係の解消を巡る紛争は何度も経験していますが、勝敗は、いかに多くの事実関係を主張できるか、不利益な事実関係とか証拠を効果的に弾劾できるかにかかっていると感じています)。

このような現状にある「継続的契約」の解消に関しては、本来であれば、民法等の条文上、解消が認められるための何らかの基準が規定されるべきであり、近年施行された民法改正においては、改正案を策定する際にこれが議論されていたのですが、結局立法化は見送られ、依然として、法解釈の問題として裁判官の判断に委ねられているという状況は変わっていません。

いずれにせよ、この種の紛争を防止するためには、契約書において、解消のための要件と効果を明確に規定すること、契約期間を長期とすることは避け、更新の際にも常に契約条件の見直しを図っていくこと、さらに、契約に基づく普段の運用についても、契約書に規定された文言と異なる運用は避け、そのような場合は契約書の修正を行うこと等、普段からの「契約管理」が極めて重要であるといえるでしょう。

(文責・梅本 寛人

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