京橋・宝町法律事務所

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コロナ禍における「自然災害債務整理ガイドライン」の利用

コロナ禍と自然災害債務整理ガイドライン

自然災害債務整理ガイドライン(正式名称「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」)は、自然災害の影響により、住宅ローンや事業性ローンなどの返済が困難になった個人(給与所得者、個人事業主等)が、債務の減免を受ける手続の準則として設けられたもので、平成28年4月から運用が開始されました。これまで、この準則は、熊本地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震等の災害において、被災者の生活や事業の再建に活用されてきました。
令和2年12月1日からは、今般のコロナ禍の影響により、失業や収入・売上の減少によって、債務の返済が困難になった個人(注)についても、この自然災害債務整理ガイドラインを利用した債務整理が可能になりました。
本稿では、このあらましを解説します。

(注)具体的には、令和2年(2020年)年2月1日以前の収入や売上等と比べて、収入や売上等が減少している個人。


自然災害債務整理ガイドラインとは?

自然災害債務整理ガイドラインは、災害救助法(昭和22年法律第118号)の適用を受けた自然災害の影響により、住宅ローン、住宅のリフォームローンや事業性ローン等の債務を返済できなくなった個人の債務者であって、破産手続等の法的倒産手続の要件に該当することになった債務者について、このような法的手続によらずに、債権者と債務者の合意にもとづき、債務整理を行う際の準則(取り決め)です。

手続の流れ

  1. 手続に着手することの申出
    対象となる債務者(注1)は、まず、対象債権者(注2)のうち、残高の額が最大の者(例えば、住宅ローンを借りている金融機関や個人事業主の場合のメインバンク)に対して、ガイドラインに基づく手続に着手することを申し出ます(書式については、こちらを参考にされてください)。この申出を受けた債権者は、10 営業日以内に、本ガイドラインに基づく手続に着手することへの同意または不同意の意思表示を書面により行います。この場合、債権者は、債務者に求められる要件(注1)のいずれかに該当しないことが明白である場合を除いて、不同意を表明してはならず、不同意を表明する場合にはその理由を当該書面に明記しなければなりません。
    (注1)災害の影響を受けたことによって、住宅ローン、事業性ローン等の債務を弁済することができないことまたは近い将来において債務を弁済することができないことが確実と見込まれること、弁済について誠実であり、その財産状況(負債の状況を含む。)を適正に開示していること、ガイドラインに基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど債権者にとっても経済的な合理性が期待できること、反社会的勢力ではないこと、といった要件があります。
    また、対象となる債務は、令和2年(2020年)2月1日以前に負担していた既往債務令和2年(2020年)2月2日から同年10月30日までの間に、新型コロナウイルス感染症の影響による収入や売上げ等の減少に対応することを主な目的として、政府系金融機関や民間金融機関から貸付け等を受けたことに起因する債務となります。
    (注2)銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、政府系金融機関、貸金業者、リース会社、クレジット会社及び債権回収会社並びに信用保証協会その他の保証会社などです。
  2. 専門家による手続支援を依頼
    無事に債権者から手続着手について同意が得られたら、地元の弁護士会などを通じて、自然災害債務整理ガイドライン運営機関に対し、「登録支援専門家」(注3)による手続支援を依頼します。依頼を受けた「登録支援専門家」は、債務者に対して、依頼を受けた旨を債務者に通知します。
    (注3)「登録支援専門家」とは、弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士です。これらの専門家が、中立・公正な立場から債務整理を支援しますが、弁護士以外は一部業務を実施できません。また、債務者において、それまで相談をしていた弁護士等の専門家が、そのまま「登録支援専門家」になることはできません。
  3. 債務整理(開始)の申出
    登録支援専門家が決まった後は、その支援も受けつつ、債務者は、すべての対象債権者に対して、書面により同一の日に、債務整理を開始することを申し出ます。また、この申出書のほか財産目録などの必要書類を提出します。債務整理の申出後は、債務の返済や督促は一時停止となります。
  4. 調停条項案の作成及び提出(その前から登録支援専門家の支援を受けて事前協議)
    債務者は、登録支援専門家の支援を受けながら、3の申し出から原則として3か月以内に、調停条項案(債務の減免や返済計画などを記載した取り決め)を作成して、登録支援専門家を経由して、すべての対象債権者に提出します。調停条項案に何を記載すべきか、どのような注意点があるかは、ガイドラインに詳細が定められています。また、いきなり債権者(特にメインバンク等)に調停条項案を提出するのではなく、その作成段階から、調停条項案について事前に協議していくことが重要です。
  5. 調停条項案の説明
    調停条項案の提出後、すべての対象債権者に対して、調停条項案の説明、質疑応答及び意見交換を同日中に行います。債権者が多い場合は「債権者説明会」といった会議を開くこともあります。
    対象債権者は、説明等がなされた日から原則として1か月以内に、債務者及び登録支援専門家に対して、調停条項案についての同意あるいは同意の見込みの旨または不同意の旨を書面により回答します。
  6. 特定調停手続
    すべての対象債権者からの同意あるいは同意の見込みを得た債務者は、簡易裁判所に対し、特定調停の申立てを行います。特定調停手続の成立により、債務の減免、支払計画が確定することとなります。

(参考リンク)

03-6272-6918